Climbing Mate Club

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日本の山で重症の高所障害を防ぐには

長山協医科学委員,医師 浅野 功治

 日本アルプスの高度(2500〜3000m)でも、低酸素環境に起因する高所障害がしばしば生じます。いわゆる"急性高山病"の症状は、頭痛(基本症状),食欲低下,吐き気,疲労感,倦怠感,めまい,睡眠障害です。"急性高山病"は、ほとんどの場合高地順応により軽快・消失しますが、まれながら、日本アルプスでも、生命を脅かす重症の高所障害、すなわち"高地脳浮腫"(脳が腫れる:歩行障害,意識障害),および"高地肺水腫"(肺に水が貯まる:咳,安静時呼吸困難,虚脱感,胸部圧迫感,頻脈)に進行し得ます。高所障害に罹るか否か,およびその重症度は、到達高度(特に宿泊高度),登高速度,個人の罹り易さに依存します。

 予防はゆっくり登ることです。平地から出発し、同日に2500m以上へ一気に登って泊まるよりは、できればもっと低い高度で一度泊まった方がよいです。初日の無理は禁物です。前述の急性高山病の症状が出たら、そこで登高を止めましょう。高地脳浮腫や肺水腫を発症する場合、(例外もありますが)典型的には2500m以上に達して1日〜4日を要します。2500m以上に達して急性高山病の症状が出て、翌朝に前日より軽快しない場合は、迷わず下りましょう(500m以上,症状が軽快するまで下る)。前述の高地脳浮腫や肺水腫を示す症状が出たら猶予はなりません。自分の高所に対する反応を、経時的に観察することが重要です。