Climbing Mate Club

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海外登山の勧め3

山岳会 クライミング・メイト・クラブ 永沢 栄

3.海外登山に行くには (行くためのノウハウ 2)

 休みは決まりました、では次にお金です。休みが自由に取れるなら安く行くことが出来ますが、みんなが休めるときは高くつきます。
5万円まで、韓国、台湾:やっぱり近くて物価の安いところ。このくらいなら誰でも出せるでしょう。安いからといってバカにしてはいけません。韓国の花崗岩のスラブは結構楽しいし、台湾の沢なんか行ってみたいものですね。
10万円まで、東南アジアなら結構行ける。タイやベトナムでフリークライミング2週間なんてのも可能です。この位なら学生でもアルバイトをすればすぐ貯まる。
20万円まで、シーズンオフなら結構行ける。シーズンオフなら、ヨーロッパ、北米、南米、ネパールの5000mも可能です。いわゆる盆暮れのハイシーズンは厳しくなりますが、暇はあるけど金が無い人は十分充実した登山が可能です。
40万円まで、このくらいになると気合がいる。でも何とか出せるレベル。6000mまでなら結構自由に行くことが出来ます。ハイシーズンのヨーロッパ、ヨセミテも可能です。選択範囲はぐっと広がります。
60万円まで、かなりギリギリですが何とか無理して出せるレベル。このくらい使えるならば、ほとんどのところが可能になります。しかし毎年というわけには行かないでしょう。かなり悩ましい金額ですが、計画を立ててしっかりとやっていないとひどいことになりそうです。
100万円まで、何年か前から計画して個人が出せる限界。8000m以上の高所登山で無い限りどこでも行けますが、人生設計をちゃんとしておかないと破滅します。
100万円以上、どこかからお金を集めてこないと難しい。スポンサーを付けたプロの領域ということになるでしょう。そうです、プロの領域、100万円かけてもその成功報酬が100万円以上になる人に限られます、また成功報酬を得る努力もしなければ成りません。もちろん大金持ちの方は別ですが。

ラガッオイ
ラガッオイ

 お金にもいくつかのスッテップが有りますね。40万円までは割かし自由に、100万円までは個人の努力で、100万円以上は誰かに認めてもらってという事に成るでしょう。日本では、誰かに認めてもらって行けたのに、自分で行ったと思っている人が多いですね。一番悪いのは、行かない人に勤労奉仕させて、自分は30万円しか出していないから自分で行ったと思っているような人たちですね。一度こうゆう甘い汁を吸ってしまうと、なかなか離れられないようでまたそれを狙う、これでは周りが疲弊しないわけが無いのに気づきませんか?
 でも、40万円用意すれば結構行けますし、充実した登山が可能です。私が最初に行ったヨーロッパアルプスも予算40万円でした。当時は飛行機代も高く、安航空券を見つけても28万円もかかり、滞在・登山費用は約4週間で12万円、スイスのホテルでは600円で屋根裏部屋に泊めてもらいました。キャンプ場を利用すれば安く上がりますし、物価の安いネパールのような国なら大名旅行も出来ます。

 最後に一緒に行ってくれる人です。これが本当は一番難しいのかもしれません。なにしろ行きたいという人は多いですが、行くという人は少ないですから。もちろん、日本で山へ行く人が居ない人は、自分で探すのは無理でしょう。「じゃどうすんのよ!」 ツアーが有るじゃないですか。ツアーに入って、現地まで、現地では一人で自由行動。こうすれば一人でも話し相手は居るし、面倒な手続きや、もしもの時の心配も要らないし、費用もそんなに割高にはなりません。さらに、ツアーで一緒だった人と次回は一緒に行けるかも? それは貴方の魅力しだいです。
 日本では一緒に行く人が居る方、日本と同じように(今までお話したように)考えれば、行く人はいるはずです。日本でやっていない事をしようとするから行く人が居ないのです。
 レベルの高いことをしようとして、なかなかそのレベルの人を探せない人。この方はかなり問題です。レベルが高いと言う事はとりもなおさずやる人が少ないということです。少ない中から都合の会う人を探すのはさらに困難でしょう。登山の先進国ならガイドと登るというのはいかがですか? 「ガイドと登るなんて、金もかかるし、自分で登ったことにならない。」なんて考えていませんか? お金はかかります、でも高いレベルのパートナーを育て上げるのよりは、はるかに安く付きますし、自分の都合に合った時に自分の好きな所へ行ってくれるパートナーなんて、どの道そんなに居るわけ無いでしょう。それに、自分で登っているつもりになっていても、実際は確保してくれる人が居たり、トップで登ってくれる人が居たりで、本当に自分で登っているのはソロクライマーだけで、自分が主体になって判断しているに過ぎません。ガイドと一緒でも、自分が判断する能力を持っているなら当然自分が判断してもいいのですよ。私の友人のガイド、エリコなんか、「この天気どう思う?」とか「ルートこっちかなー」なんて聞いてきますし、岩が悪くなれば、「俺はもっと生きていたい」とかも云います。
 ガイドは登山の優れたパートナーではあっても、日本のように講習会の先生ではないのです。最も、やっぱり責任を持たなくてすむだけ気楽は気楽ですけど。

天山のエーデルワイス
天山のエーデルワイス

 さていかがでしたか、海外登山に行く気になりましたか? 行く気にならないとダメです。行きたいでは結婚したいと同じで、結婚したいけど相手が居ない、だから結婚できない。行きたいでは、休みも取れないし、お金も無い、だから行かない。ということに成ります。
 本当は、休みも取れるし、お金も大丈夫なのがお解かり頂けたでしょうか。最後に、たった3日でドロミテを登ったことを書いてみましょう。
 仕事の都合で、2003年にヨーロッパに行った帰り、たった3日でコルチナに入りました。ベネチア空港までは、エリコが迎えに来てくれました(コルチナまで200〜300Km)ので、その日のうちにコルチナへ。次の日はスポーツクライミングに近くの岩場に、次の日はカディーニ山群のカンパニーレ・デユルファーに(そうあの、デュルファー登りのデユルファーです)、そして次の日はセストの人口壁に、まるで日本に居るように登山を楽しむことが出来ました。そして彼が請求したのは、デユルファーのガイド料200ユーロだけでした(もちろん、車代は私が勝手に払いましたけど)。私にとってエリコは、いつも現地に居る立派なパートナーなのです。こうなるまでに10年かかりましたが、日本でだってこんなことをしてくれる友人を作るのに10年はかかるのではないでしょうか?

 さー海外登山に出かけましょう。自分の人生を豊かにするために、新たな発見をするために、そして新鮮な出会いのために。