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登山中の高温障害を防ぐには

長山協医科学委員,医師 浅野 功治

 体外への熱放散は、

  1. 放射(赤外線として温かいものから冷たいものへ)
  2. 伝導(触れているものに伝わる.空気への伝導は風による対流で促進)
  3. 蒸散(汗の気化による)

によりますが、高温環境あるいは労作中の熱放散は、3)の蒸散に大きく依存します。いわゆる熱中症(高温障害)は、この蒸散のための発汗増加,およびそれに起因する体液量(水分)減少と電解質異常(塩分喪失)に関係します。
 労作による熱中症は寒い時でも起こりえます。熱失神(皮膚血管拡張による低血圧に起因),熱痙攣(塩分喪失による.痛みを伴う痙攣),熱疲労(水分と塩分喪失による.疲労感,頭痛,嘔気など),熱射病(熱放散が妨げられ、高体温により体温調節機構の破綻.意識障害,高体温,発汗停止など.命に関わる)の順に重症度が増します。

 予防は、水分と塩分を両方補給することです。筆者は、夏季には水を1日分2リットルは用意します。塩分補給には、電解質配合のいわゆるスポーツドリンクの粉末を水に混ぜればいいです。行動食も同時に取りましょう。事前の暑熱順化も有用です。下界で冷房に慣れてはいけません。暑熱に順化すると、汗への塩分の喪失が少なくなります。

 また、軽症の熱中症の症状を見逃さないことが大事です。ただちに涼しく風通しのよい所に寝かせ、水分と塩分を補給しましょう。あと一言、帽子は必携です。